観光

ケーススタディ

観光客向け事業を行っている事業者の経験を、これから商品を造成、展開されようとしている方々と共有し、さらなる観光客の受入態勢の充実を図っています。

事例1

一般社団法人ひろしまきもの遊び
代表理事 澤井 律子(さわい りつこ)さん

【事業を始めたきっかけ】
2005年に日本人向けに「着物を着る機会とコミュニティづくり」としてはじめたサークル活動を通じて、海外の方からも「着物を着て参加したい」というリクエストが届くようになり、2016年にインバウンド事業としてスタートさせました。

【商品開発】
ただ単に着物を着るだけではなく、長年の活動で培った人脈を活用し、茶道や書道、写経、風呂敷、お香づくり、水引、など日本文化に従事する専門家によるレクチャーをセットにした商品を提供することからはじめました。

【直面した課題】
訪日外国人の訪問先1位が平和記念公園であることから、事業立ち上げ当初は公園近くに事務所を構え、受け入れ態勢を整えていました。が、平和記念公園に立ち寄る方は祈りが目的であり、そのまま文化体験に関心を抱いていただくことの難しさに直面しました。 そこで、平和と和文化に関係性を持たせることが必須と気づき、意味づけを行いました。その結果、着物を着ることで、「日本人になれた気がする」「日本人魂を感じた」など、容姿にとどまらず、心を寄せてくださる感想が聞けるようになりました。 とは言え、かつては焼け野原だった広島に緑があふれている景色のなかで着物を楽しんでいただくためには、事務所を祈りの主である平和記念公園の近くから、四季折々の季節を感じられる縮景園近くへと、2017年夏に引っ越しをしました。

【現在】
着物体験後、事務所から徒歩圏内に位置する日本庭園・縮景園への散策を商品に組み込むことで、利用者さまの満足度もアップしています。
庭園内の和室で着物に着替え、茶道や書道を体験いただいたのち、そのまま園内を散策いただくコースはスペシャルなものとなっています。

【ビューローの存在について】
インバウンド受入ビジネスフェアへの出展で地元企業さまよりコラボの打診をいただいたり、チームを組める同業者との出会いなど、かゆいところに手の届くマッチングをしていただいています。

【今後の展望、課題など】
着物姿で周遊できるコースを増やしていくことと、留学やホームステイ、企業研修などで広島に滞在する海外の方に体験していただけるメニューを展開していきます。
また記念日の想い出づくりとして、和装花嫁体験コースの導入も予定しています。正式な紋付袴・色内掛など、日本のウェディングスタイルを体験いただける内容です。

事例2

株式会社mint
代表取締役 石飛 聡司(いしとび さとし)さん

【sokoiko!の発案経緯】
弊社(株式会社mint)は2014年6月にデザイン事業及びWEB開発会社として設立しました。当初3名の役員で出資し、それぞれがUターンで広島に帰ってきたという経緯もあり地域に根付き、地域に役立つ会社にしようという意識をもっての起業でした。
しかしながら、いつのまにか受注制作だけをする業務内容に偏ってしまい「このままでは当初の想いと違う。何か思いを実現できる自社事業はできないものか」と思い色々と構想を描く中で目にしたのが、日本に、そして広島に訪日外国人観光客が増えているというニュースでした。『平和公園、宮島に訪日観光客がたくさん!前年比大幅アップ!時代はインバウンド!』という内容のニュース。
しかしその内容に対して強烈に違和感を覚えました。理由は「うちの近所には全然いないけど」というものです。訪日外国人観光客が増えて経済効果が上がることは広義で見れば地域全体に波及するのですが直接的に地域の疲弊していく商店街や荒れていく公園などに果たして寄与しているのかという疑問が生まれました。
地元の人間からして、もっと楽しい場所や綺麗な景色、あったかい人々はあっちこっちにあるのにそこに来てくれないのはもったいない!という思いから、観光地じゃなくてローカルな場所を紹介する観光事業をしよう!と発案の経緯に至りました。
色々と情報を集める中で訪日外国人観光客、特に欧米の方は地域の日常生活や人との交流などに興味があるという情報があり、これも大いに背中をおしてくれました。

【事業化への道のり】
ローカルを紹介するぞ!とアイデアはできたもののそれをどのように形にするのか。
色々な方法があります。例えばメディアを立ち上げて情報として紹介する。観光案内所のように訪問者を最適な方法で案内するなどアイデアはたくさん出たのですが、それらは既に整備されていて魅力的なものだったので『ツアー』で紹介する体験事業をやろうと決めました。広島観光コンベンションビューロー(以下、ビューロー)の「ひろたび」やその他のメディアサイトや観光案内所との連携もできてそれらの情報と地元の知見を活かして直接的に案内するのに最適な方法と思い付いたのです。 ツアーに英語ガイドが帯同することで道に迷うこともなく英語でのコミュニケーションが難しい場所でも意思の疎通ができるようにし、広域の範囲を移動できるように自転車を活用したサイクリングガイドツアーを基本内容としました。
「sokoiko!」の名前をつけたのもこのころで非常に単純ですが「そこいこう!」っていうくらいの気持ちで訪日観光客が地域へ気軽に訪れる世界を創造してつけた名前です。
構想を練って企画書を起こし各種交流会やイベントなど様々な場所へ出向きこんなことやりたいんです!!と言いまくりました。 その中で日本政策金融公庫とひろしまNPOセンター主催のソーシャルビジネスコンテストに応募しないかとお誘いがあり、応募させていただいたところ大賞を受賞させていただき、いよいよ後には引けなくなりました。

【当初の課題と解決方法】
2016年、そうしてsokoiko!という看板をかかげ事業活動をスタートさせたのですが、想いと勢いでここまでやってきたので課題が山積みの状態でのスタートでした。 大まかに分けると「英語ができない(ガイドがいない)」「自転車がない(お金がない)」「経験がない(観光事業経験0年)」の3点です。まさにイメージだけでつくった事業の課題を以下のように解決していきました。
①英語ができない
地元の学生や主婦の方で英語ができる人を見つけてガイドをしてもらうということを進めました。学生や主婦といってもつながりがなかったので、対象になりそうな人が集まるイベントなどに多数出向いてネットワークを作り、その中で条件があう学生さんが見つかりチームに入ってもらいました。
②自転車がない
備品をそろえる資本(お金)がまったくなかったのでシェアサイクルのぴーすくると連携できないかと企画書を作り、行政の方に仲介いただきほぼ飛び込みに近い形で事業構想の相談をさせていただきました。ぴーすくるのお役にもたてるはずと熱弁し、先方の好意もあり無事連携させていただく運びになり、電動自転車という最高のかたちで自転車を活用できるようになりました。
③経験がない
これに関しては本当に手探りで積み重ねてきました。何より力になってもらえたのが事業化に動いた際出会った方々で、ビューローも大変心強いつながりになっていただきました。経験がなく分からないなら聞く!というスタンスで知り合った方々に相談に乗ってもらいながら未経験の課題は1つ1つクリアーすることができ同時に経験を積み自信もついてきました。 この他にも資金面や法整備の問題などありましたが、知見を持っている方のアドバイスを仰ぎながら一つ一つクリアーしていきました。
すべてにおいて共通しているのは人脈を発案当初から広げていたことが、課題が出たときに非常に助けになったことです。チーム作りはもちろんですが、広く事業を知ってもらいアドバイスをきくことは長い事業展開において本当に助けになります。

【事業スタート時のPR方法と反応】
課題を解決してひとまずサイクリングツアーができる体制を整えてPRの開始です。まずはサービスのHPをつくり予約の受付を可能にしました。その他ゲストハウスさんやつながりのあるホテルさん、観光案内所などにチラシを設置させていただき、Facebookもたちあげ、広報活動にも力を入れて、さてやるぞ!と気合をいれたところ、非常に現実的な問題に直面します。
正直、予約の受付を開始したらドシドシ問い合わせが来ると思っていたのですがまったく問い合わせがないという事態。モニター目的で無料に近い条件での募集にもまったく反応がなく、ガイドと「集合場所にあつまり集合時間に解散」という日もたくさんありました。しかもそれが約半年続きます。売上の確保はもちろんのこと、ガイドやチームメンバーのモチベーションをキープするのが大変でした。
チラシを置いているだけでは効果がでないと悟り、宿泊施設の運営者の方に宿泊の方に直接おススメをいただくようお願いして少しずつ予約が生まれ始めたのですが、月に1本、2本程度のもので、「この状態だとなかなかコンスタントに集客をするのは難しい」と解決方法を模索します。
何か良い方法はないかと毎年開催されているインバウンド受入ビジネスフェアに出展するなど動きは止めずに情報収集していく中で、他社さんの取り組みや様々な繋がりが生まれて活路を切り開いていきます。

【OTAサイトの活用】
集客のため販路を確保しないといけない課題にあたり、OTA(Online Travel Agent)の存在を知ります。
簡単にいうと体験の通販サイトのようなこのサービスは、手数料はもちろん発生するのですがサービスの存在を旅行者に知ってもらい、さらにそのサイトのWEB上で予約が完結するという利点があります。
OTAは1社ではなく複数あるので国内外問わず無料で掲載できるものにはとにかく掲載して、広島にsokoiko!があるよ、ということを、とにかく認知してもらうよう努めました。その動きの中で少しずつ予約数が重なりだし、実際にツアーを催行する頻度も増えてきました。
OTAの利点はレビュー機能にもあります。やはり口コミは効果が高く、旅行者が興味をもったサービスの評価を確認いただき、満足度が高ければ最高の後押しになります。実際、レビューをみてツアー参加を決めたという方は数多くいらっしゃいます。

【事業が軌道に乗り出した転機】
OTAの活用で予約件数が増え、実際にツアーをスタートするタイミングが増加すると同時にHPからの問い合わせも増えてきました。様々なチャンネルでsokoiko!を紹介することでHPへのアクセスも増加したのが要因だと思います。
しかし実際に事業がうまくまわりだしたのはこの予約数増加だけではなく、チーム作りがうまくいったのが一番大きい転機だと感じています。
ツアー数が増えた場合、ガイドの数も比例して増やしていかなくてはならないのですが、同時にクオリティの担保も重要になってきます。そこでやはり課題なのが自身の英語力が乏しいということ。ゲストに高い満足度をもってもらうためにはガイドツアーという性格上内容を正しく、分かりやすく伝える必要があります。
さらに、ただサイクリングするだけではなく、広島の特性である「平和」というものをテーマに戦前、戦中、そして戦後から現在までの復興をツアーで巡る「ピースツアー」をつくり、これが好評をいただきはじめたので、ゲストにその世界観に入ってもらうためにもガイド力は必須の項目になりました。
そこで英語イベントを生業にしている他社さんとの出会い、そしてチーム作りがこの課題を解決することになりました。まずそのイベントに英語を使いたいガイドの卵が多数いたということ。そして、英語堪能な担当者の方に講師をしてもらいsokoiko!ガイド講座を立ち上げ、ガイド希望者に受講してもらうことで、ツアーの世界観を表現する語学力やコミュニケーションスキルなどを事前に得る機会を設け、その後実際にツアーに出てもらったことで、顧客満足度が上がりレビューの内容や投稿率が飛躍的に伸び、結果的に予約件数も増え好循環を得ることができました。

【インバウンド・観光ビジネス総合展への共同出展】
ツアー数も増え自信をもって提供できるコンテンツに成長したこともあり、ビューローからお声かけがあった「インバウンド・観光ビジネス総合展」にも他の事業者さんと一緒に共同出展させていただきました。
ここでは海外のバイヤー(旅行会社)の方が多数ブースを持たれていて、直接商談をできるという貴重な機会をいただきました。実際に問い合わせまで発展して、取引先が増えたりなど手ごたえのあるものとなりました。
バイヤーだけではなく、全国規模のイベントなので各地で活動している事業者とのつながりも生まれ、出会いの機会としても非常に有意義なものでした。

【現在の状況と今後の展望】
販路が広がり、ガイドのクオリティも担保できるチームを得ることができ、現在は当初の状況からは想像できないほどコンスタントに予約をいただけるようにツアーは成長しました。
広島でのツアーについては引き続き満足度の高いものを提供していくとともに、夜の時間を活用したフードツアー(飲み歩きツアー)の造成をしてご好評いただいています。
また、ツアー以外の事業活動も活発になり、これまで得た知見を活かして各地でセミナー講演などに呼んでいただき、自身の経験をお話させていただく機会も増えてきました。
その中で各地を巡る機会が増えてきて知ったことがあります。それは「どの地域にも語るべきストーリーがある」ということです。
広島でピースツアーというストーリーを取り入れたものが好評いただいている経験から、各地のストーリーをツアー化したいという想いがあり広島以外の地域でのフランチャイズ展開を進めています。 現在は江田島と東京での展開が実現しており、今後も増加させていく予定です。
またこれからも様々な課題や超えるべき壁が出てくるはずですが、ビューローはじめ出会った皆さんやチームメンバーと一緒に最高の体験を日本に訪れる世界中のゲストに提供していこうと思います!

支援は無料で行っておりますので、広島観光コンベンションビューロー 魅力創造部 受入態勢整備担当(TEL:082-554-1814、Email:inbound@hiroshima-navi.or.jp)までお気軽にご連絡ください。